被爆医師肥田舜太郎先生の講演―③―
その後、30年、そういう患者をずーっと診続けて、1975年にアメリカに私行きました。第一回の原水爆実験禁止の国民代表団として国連に要請に行ったんです。その代表の中に入れてもらって国連へ行った時に、アメリカの医者で、たった一人、内部被曝の患者ばかりを診て、ちゃんと理論を作って、アメリカ政府に対決している博士がいたんですよね。ピッツバーグ大学のアーネストス・スタングラス[◆註:2]という医者です。まだ生きています。僕より2つほど歳下ですけど。
1923年ドイツのベルリン生まれ。アメリカのピッツバーグ大学医学部放射線科名誉教授。専門は放射線物理。スタングラス博士の「低レベル放射線の人体影響」に対する研究は、広島原爆による放射線影響を過小評価した論文がきっかけとなった。博士はアメリカにおける核実験からの死の灰により、幼児の過剰死が起こっていることをいち早く発表した。その後、原子炉周辺でも同様に過剰死や健康障害が起こっていることを発見した。
これらの綿密な分析に基づいた名著『Secret Fallout』(邦題『赤ん坊をおそう放射能』)を著した。アメリカの著名な統計学者ジェイ.M.グールドと非営利団体「放射線と公衆衛生プロジェクト(RPHP)」も設立。更に研究を通じ、一見健康な人の間でも、学力低下や、免疫力低下、感染症へのかかりやすさ等、社会全体としての質の劣化が生じているという理論を展開している。[註:オワリ]
それで日本に帰ってきて、その本を日本語に翻訳して、お金がありませんし、本屋はそんな本なんか出版してくれるようなところなんかも無かったのですが、時事新報社っていうところが、その本のことを気に入ってくれて、本として出版してくれました。でも、この本が、日本で出た低線量放射線の内部被曝の初めての本[◆註:3]ですけれど、ほとんど誰も読んでないと思います。
3.11福島原発事故原因の評価から、被爆国日本にある原発の矛盾、今後の賠償問題、モニタリングポストやホールボディーカウンタの限界、内部被曝と外部被曝の違い、「安全基準値」批判、「ペトカウ効果」とは何かなど・・・低線量被曝をめぐる重要な指摘など綿密な調査研究書。[註:オワリ]
その中味のうちで関係の無い事は僕は知りませんけど、「原爆によって広島・長崎の市民、兵隊が沢山被曝した。中には死んだ者も沢山おる。それから現在、怪我をし病気をし入院して寝ている者もおる。しかし、彼らが今被っている被害は、アメリカの軍の軍事機密である。これについては本人は勿論、それを見た者も、聞いた者も、絶対に口外してはならん。これに逆らう者は厳罰に処す」と・・。
それから「日本の医師、医学者は当然こういう被曝した人間から診療を求められる。その場合は医者としての義務として診療はしても宜しい。ただ、その結果を詳細に書いて複数の医師同士で研究をしたり、論文で学会に出したり、日本の医学界が放射線の被害について研究、調査することは一切いけない。これに違反した者は厳罰に処す・・・」と。
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