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2012年2月 8日 (水)

被爆医師肥田舜太郎先生の講演―②―

 最後に、これも不思議なんですけれど、筵の上に寝ている患者がですね、あと大体数時間しか生きていないっていうようなそういう人間が、何気なく自分の頭をこうやって、頭髪を後の方に手で撫で上げるんですよね。するとそうやって触った自分の手のひらに毛がすうーって、こう取れるんですよね。あの・・・脱毛、脱毛って・・よく被爆者の事が書かれていますよね。

 でも、脱毛っていうのとは違うんですよね。触ると取れるんですよね。これは僕らしか見たことが無いんですよね。その後、世界中のどこを見ても、こんな現象は有りません。あの時だけだったんですよね。で、それは後で解ったんですよね。だいぶ10年ぐらい経って、20年くらい経ってから、なぜそういうことが起こるのかっていうことが、アメリカから伝わってきました。

  それは毛の根本っていうのは毛根細胞っていいますよね。こうやって手で髪の毛をプツンと抜くと、手で触ると毛の付け根に肉が付いていますよね。この肉が毛根細胞って言うんですよね。これが頭の頭皮の肌にくっついているんですね。この毛根細胞というのは人間の体の中にある細胞のうちでも一番勢いの良い、生命力のある、どんどん伸びる、分裂する細胞なんですよね。こういう細胞分裂が活発な細胞が、一番先に放射線にやられるらしいんですよね。

  で、爆発した原爆の相当強烈な放射線がまず頭上を照射する。で、その放射線で毛根細胞が全部即死したんですね。結局、頭皮の地肌から離れた毛が毛穴につっ立っていた。そんなこと知らないから患者はこうやって手で頭を撫でると、すーっと毛が取れちゃう。これがあの時の脱毛なんですね。

  で、そう言う見たことの無い症状が出ると、大体1時間から2時間ぐらいで全部死んでいくんですね。で、30名、50名の被爆者が、こう地べたに寝てるんですけど、そういう所で誰か一人が死ぬと僕らが呼ばれて行って、その死んだ人の所に行くんですね。するとその死んだ人の周りで寝てる患者が、そういう丁度毛が抜けて、また死んで行くところにぶつかるんですよね。

  だから僕らの経験でいくと、あのピカドンに遭った人は、こういう症状で死ぬんだなぁ・・っていうことが、理屈じゃなくですね、数多くそういうことを目撃した経験から教えられたんですよね。これが、後から付けられた「急性放射能症」。つまり原爆の放射線でやられた最初の急性症状で、2万7000人の人が、どんどんどんどん死んだんですね。

  その次に僕らがビックリしたのは、本人が「軍医殿、わしゃぁ、ピカには遭っておりまへんで・・!」って言うのがいるんですよ。「どうした?」って聞くと、「その日は広島にはいなかった!」って言うんですよね。「原爆投下された8月6の日二日後に自分は広島に帰って、自分の子どもが帰って来ないのがいるから、焼け跡を探して歩いた」って言うんですよね。「大体二日くらい歩いたら、どうも体の調子がおかしくなって、それで診てもらおうとおもってここへ来たんだ」って言うんですよね。

  僕らの持っている医学の知識でいくら診てもですね、具合が悪いってところが見つけられないんですよね。当時の事だから、難しい検査なんてものは出来ません。でも常識的にこれはおかしいと・・。で、そう言っているうちに、変な症状が出て死んでいっちゃうんですよね。この人は一体何で死んだのか?っと・・・。ピカにも遭っていないと。こりゃ何だ?・・って言うのが自分の放射線病との出会った最初ですわ。

  それから、今言う、いわゆる「内部被曝」。当日広島市内にはいなかったのに、1週間・・そうですねぇ・・法律の上では数日以内に広島市内に入ったというのが被爆者と認められているんですが、この連中の中から僕らの診ていない病気がうんと出てきたんですね。

  つまり、今現在は、内部被曝という言葉があるけれど、当時は僕らは「入市被曝」って呼んでいました。本人は原爆が炸裂した当日には広島にはいなくて、後から町へ入ちゃって、こうなった・・と。で、その原因が、全然僕には解らなかったです。

                    ―つづく―

 

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