第20回橘座公演「林家染丸独演会」を聴く
11月12日、土曜日の午後、第20回橘座の落語公演があった。この日の落語家は、上方落語の林家染丸とその弟子たちであった。異色は「女道楽」の内海英華であった。
橘座と言ってもそんな寄席が名古屋のどこにあるの?という人が多いだろうと思う。東別院にある名古屋産業大学工業高等学校のホールで年に2回開かれているものだ。主催は生徒会である。
私は、ボランティアの日本語教室を終えると、アメリカ人のJ.Jを伴ってすぐに地下鉄で東別院に向かった。これまで人気の橘寄席はすぐに満席になるからであった。幸い開場5分前に着き、会場にはよい席があった。
校長の挨拶で、今回は20回になる節目だということであった。年に2回ずつ行われるので10周年ということになる。
私は、この落語会を楽しみにしている。いつも事前に案内の葉書を送ってくれるので有難い。
この日の演者、林家染丸は芸歴45周年になるのだそうだ。「軽業講釈」の枕で、62歳だと話した。写真も実物も髪の毛が黒いののだが、「髪の毛は多いのですが、染めています。名前が染丸ですから。」と言って笑いを取った。
この日の演目は、「開口一番」がまだ駆け出しの林家愛染、次が「ふぐ鍋」で林家染弥であった。
「ふぐ鍋」は初めて聴く落語であった。フグのてっちりは有名だが、それはフグのことを大阪では「鉄」と言うことから来ていると枕で語った。なぜ鉄というかというと、弾は鉄でできている。フグを食べるとどの毒に当たることから「タマ(弾)に当たる」というしゃれなのだそうだ。このことを始めて知った。
てっちりをご馳走してやろうという大家とよばれる店子がお互いに相手に先にフグを食べさせようとする様子を滑稽に描いたものだ。
林家染丸は、前半で「軽業講釈」を語った。これも初めて聴くものであった。軽業興業と講談の小屋が隣同士になったことから騒動が起きる。軽業の音がうるさくて講釈ができないという。その争いを三味線太鼓の鳴り物入りでおかしく演じた。
中入り後の内海英華による「女道楽」は、珍しいものであった。三味線を弾きながら都都逸や端唄などを唄い、合間に面白おかしい話をするというものだ。「女道楽をする者は私1人しかいません。そやよって日本一です。いや世界一です。」と言って笑わせた。この色物はとてもよくて、J.Jも喜んでいた。
最後は、染丸の「三十石」であった。京都伏見から淀川を下り、大阪に到る交通手段として三十石舟があった。それに乗る客の様子を面白おかしく描いたものである。これも鳴り物入りで賑やかであった。
この日の出し物は、いずれもナンセンス・ストーリー系のものばかりで、その点でわ物語が単純でアメリカ人のJ.Jにもよかったようだ。J.Jは日本語がよくできるので一度落語を聴いてみたいと付いてきたのだ。
観客はほとんどが高齢者で若い人は余りいなかった。若い人も面白い伝統芸の落語に興味を持って欲しいと思った。
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