国民を愚弄する鉢呂経済産業相の辞任騒ぎ
野田内閣が発足してたった6日で、鉢呂経済産業相が失言をして辞任に追い込まれた。
「死のまち」となったという発言が端緒となり、その上に記者に対する「放射能つけちゃうぞ」という仕草が決定打となった。
それについて、15日の朝日新聞朝刊「社説余滴」で大野博人オピニオン編集長が、「何ともグロテスクな辞任騒ぎ」と題して小論を書いている。
「政治がこんなことにエネルギーと時間を費やしていると、肝腎な問題が後回しになる、からではない。政治が肝腎な問題を後回しにしたくて、こんなことにエネルギーと時間を費やし、メディアがそれを助長したように見えるからだ。」
私もその通りだと思う。永田町の連中は迅速にやらなければならない幾つかの問題をそっちのけにして、どうでもよいようなことばかりを議論しているようだ。それをメディアも読者や視聴者受けを狙ってか、面白おかしく取り上げて騒ぎを大きくしているのだ。
死のまちを海外メディアはゴーストタウンと英訳したそうだ。福島第一原発の事故によって意に反して住めなくなり、無人化した地域は、日本語で強く表現すれば”死のまち”ということになろう。そうさせた者は誰か?それが大事であって、死のまちという表現を使ったことがとんでもない罪悪のように指弾するのは的はずれである。
やらなければいけないのは死のまち状態にした者の責任をはっきりとし、その状態からどうしたら一日も早く抜け出られるのか、いったい何時から住めるようになるのかを考えることだ。
「おけらの いつかは青空 脱原発」(9月15日)によると、今年の5月16日の参議院行政監視委員会で細川大臣が「Jヴィレッジから福島原発に行く間、 本当に町全体が死の町の印象を受けました。」 と下記のように発言している。
今、石橋委員の方からお話がありましたように、私は五月の七日にJヴィレッジとそれから福島第一原発の方に行ってまいりました。
Jヴィレッジから福島原発に行く間、これマイクロバスで行きましたけれども、その間、人が一人も見えない、いない、牛が放牧をされて、主のいない牛が、何というか、漂っているといいますか、そんな風景を見まして、本当に町全体が死の町のような印象をまず受けました。
それに対して、国会では誰も問題にしなかったのだ。マスコミも勿論取り上げていない。それが、今回は問題になったのだ。これを見てもマスコミも永田町もいい加減なものだということがよく分かる。
では、なぜ鉢呂大臣が辞任に追い込まれたのか。理由は二つあると思う。
一つは、鉢呂氏に脱原発の傾向があるということだ。それで自民党も経済界も辞めさせようとしたようだ。
もう一つは、大野氏の指摘のように、大事なことは後回しにして、政争に明け暮れることを優先しているということだ。
自民党・公明党などは国会を延長せよと息巻いているが、国会で論議されていることは、手続き論とか首相などに対する姿勢などの質問で、第3次補正予算にしても、原発対策にしても、投げ出されたままのようだ。
大野オピニオン編集長は、「メディアが問題にし、政治家が反応し、それをまたメディアが取り上げ、その度に騒動が肥大化、深刻化し、肝腎の問題は置き去りになる。そして閣僚の首が飛んで終わりになる。」と述べている。
メディアの中でも特に、週刊誌はひどい。民主党のやることなすことをこき下ろすことばかりしている。
自民党・公明党も相変わらず解散総選挙のことしか念頭にないようだ。両党とも強固な対決姿勢に変わったと朝日新聞は伝えている。
サンデーモーニングでは、毎日新聞の岸井氏が今の永田町の変わらない程度の悪さを嘆いていたが、全く嫌になる。
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コメント
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原発で儲かる大企業を抱える経団連は原発推進ですから、脱原発の鉢呂氏では困るので、首を切るきっかけを探していたのだと思います。
投稿: らら | 2011年9月19日 (月) 07時54分
全くららさんのおっしゃるとおりです。私もほとほと厭になり永田町もメディアも拒否反応です。
経団連は政策評価度を5段階に分けて、政党に献金していて、経団連の言いなりになればなるほど献金額は増えて行くとも言われています。
民主党の岡田克也氏が「政策の合致度によって献金額を決めるのは贈収賄の問題になりかねない」と言っていますが、脱原発に反対の経団連の意見が反映して鉢呂氏の辞任になったのでしょう。
投稿: maron | 2011年9月18日 (日) 22時29分
18日のサンデーモーニングで、岸井毎日新聞主筆が、「鉢呂問題後また以前の与野党に戻ってしまった。」と評していました。
NHKの調査では、政治不信が広がっているようです。国民の多数は、民主も自民・公明もしっかりしろと言っています。
投稿: らら | 2011年9月18日 (日) 09時24分
ららさんに同感です。
なんだか、私たちが政治に何も期待しなくなる(もうすでになっているかな?)ことを「期待」しているような低劣な政界の動きですね。
だから、逆に私たちはあきらめちゃいけない、と思います。諦めるのが一番いけないし、同様にすべて他人事、あっしには関わりござんせん、という態度がいけない、と日々心しています。
昨日見た「普天間」という青年劇場の芝居でも
そんなセリフがあり、共鳴しました。
もし機会がおありだったらご覧くださいね。
投稿: おけら | 2011年9月17日 (土) 20時50分
東京電力の賠償は、分かりやすく申請が簡略に行えるようにしてあげてほしいですね。マスコミもそういうことを大きく取り上げて欲しいものです。
投稿: らら | 2011年9月17日 (土) 20時23分
ニュースによれば最近、漸く東京電力による被災住民への賠償の手続き始まった。ところがその手続き書類が膨大、かつ分かりにくく、毎日3000件もの質問の電話が東電に入るそうである。私は仕事で損害賠償の仕事をしてきたのでよく分かるが、損害を受けた者がどれだけ損害を受けたのかを立証し、請求するのが損害賠償の基本である。それができなければ賠償金は支払われない。ところが、今回のようなケースでは、想像するにその立証は気の遠くなるような難しいことで、とても個々の被災者がやれることではないのは火を見るよりも明らかである。それを承知で?そんな書類を平気で送りつける東電の神経が私にはまったく理解できない。最近、東電糾弾の声は次第にトーンダウンし、むしろ擁護の動きが大きくなってきたように思えてならない。鉢呂大臣の発言は確かに被災者への配慮を欠くものであったが、おれほど大騒ぎすることだったのか。現に進行している極めて配慮を欠く東電の対応になぜメディア・国会議員はもっと怒らないのか不思議である。
投稿: Toshi | 2011年9月17日 (土) 09時06分