教員の疲弊環境を取り除け
11月1日の朝日新聞の社説には、「どうした、先生 ゆとり取り戻せる改革を」と題して、教員が置かれている過密な労働環境について改革をするように述べてあった。
退職して14年余、今では教育環境がどうなっているのかは全くと言っていいほど分からない。新聞やテレビで知る程度である。
私が退職したのは、丁度学級崩壊が全国的に広がった年であった。それで退職後勤めた非常勤講師の学校で学級崩壊を眼のあたりにした。それ以後、ずっと学級崩壊が問題になった。そして、いつのころからかモンスターペアレントなるものが跋扈し始めた。
実は、私の勤めの最後の頃にモンスターペアレントの萌芽といえるものは散見していた。それは当然で、学級崩壊を来たすような児童生徒が増加したことと親の変化は無関係ではないからである。
また、教員の質の向上ということで、教員免許状の更新が導入されたし、08年には主幹教員なるものができて教員の管理体制が厳しくなったようである。
そうしたことと前後して、教員の夏休みが取り難くなったと聞くし、夜遅くまで学校に居残る教員も増えたと言われる。(社説のデータでは、残業が月に42時間にもなるー2006年度)
社説にも書いてあったが、教員の雑務は年々増える一方のようである。パソコンが職員室に入ってある面では仕事の能率化は進んだのだろうし、授業でも私の知らなかった情報機器が導入され、白墨(チョーク)以外の手段で効率よい授業ができる環境も整えられたかもしれない。しかし、やらなければならない仕事が増え、本来の授業がおろそかになりかねない事態になっているようだ。
そうした中で心を病む教員も増加し続け、毎年12000人以上の教員が途中退職を余儀なくされているという。また、1年以内に教壇を去った新任の先生は昨年は317人も出たそうだ。
現職の先生は希望を失い、やる気もなくす人が増えていることは、『「降格」希望の教員が最多』という10月30日付けの朝日夕刊からも窺える。
私や私の研究仲間のように、「万年平教員」を貫いた者は別として、普通は将来は、教務主任、教頭、校長と登って行きたいと思うものだ。だから、そこには情実や派閥や賄賂まで入り込む余地が生まれる。人事の季節になると人事担当者のところには贈り物が引きも切らないと言われたものだ。
ところが憧れの教頭や校長になったものの管理職に疲れ、平教員に降格を希望する「希望降任」が増加しているというのだ。新設された「主幹教員」からも降任希望者が3年で10倍に増えているとか。主幹教員といえば登竜門の筈である。そこまで辿りついてヤメタという訳だ。
そこには教員免許の更新とともに、教員をがんじがらめにして管理すれば、教員の質が向上し、教育はよくなるという愚かで浅はかな考えが背景にある。
教員同士がゆとりを持って接しあい助け合う時間も環境もなく、ただ、管理が強化される中で教員は疲弊をして行くのだ。
私が、就職して2年目に58人の学級を持たされたことがある。校長に抗議をしたが受け入れられるはずがない。後から分かったのだが、私の能力を見ぬいて経験の浅い私に大学級を任せたのであった。
今からは想像もできない大人数で教室は立錐の余地もなかった。そこにはボスと言われる生徒もいた。大変でないと言えば嘘になる。若かったし一生懸命に頑張ったが、今思うと職場には自由な雰囲気があったし、のんびりしていた、何よりもよかったのは、ほぼ毎日学校で飲んだり、碁や将棋や麻雀をしたりしていたことや、運動会などの行事は地域を含めてPTAと一緒にやったことだ。
だから、困ったことはすぐに相談できたし、PTAの人たちとも仲良く付き合ったからいろいろと教えてもらうことも多かった。
私は、教育の場には自由が大事だし、みんなが助け合い、意見や助言を気安く言え相談できることや、自分から研究活動に取り組める雰囲気が大事だと思っている。長い教員生活の中で勤務評定だとか学力試験だとか管理し締め付ける仕組みが次第に強化されていったのが残念でならない。
私は、教員の管理体制を強化し、雑務を増やしている中では教員が疲弊するだけだと思う。授業と学級を大事にしてそれを第一の仕事として没頭できるような仕組みにすれば、生きがいを持って教育に取り組めるのではないかと思うのだ。
今、現職であれば、私にもとても務まらないであろうと思う。
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