面白かった本のエッセンス
「日本語教のすすめ」(鈴木孝夫著 新潮新書)と一部
「日本語の奇跡」(山口謡司著 新潮新書)→(4)(5)
(1)漢字は専門語でも分かりやすい。 猿人、葉緑素
書いたのを見ただけではわからない英語 pithecanthropus ,chlorophyll,
※ 全ての人を対象にする日本の新聞、 高級紙と大衆紙に分かれている英語新聞
(2)音と訓があることは、同一の概念が二つの別の言語により音声化されているようなもの。
漢字は何かの意味を表す書写記号(事物や事象の概念を直接四角に訴える記号として表したもの→どう読もうと勝手 例:犬の絵を見て(dog、kou, Hund,chien,canis,sabaka,kyioon)
※演説の印刷物で理解した毛主席演説
(3)日本語は、訓読み(日本語読み)と音読と(中国式読み)があるので便利。水面→スイメン、みなも)
(4)日本に伝わったのは、呉音で今の上海地方の発音である。
(5)漢字の読みは、借音と借訓による。万葉仮名は、日本語と同じ発音になる漢字を宛字にした「借音」と、意味が同じで発音が違う漢字を宛字にした「借訓」によって作られている。中国で経典がサンスクリット語の決まりを参考にして漢訳されたのを参考にして作られた。
小竹之葉者 三山毛清尓 乱友 吾者妹思 別来礼婆 下線は借訓
ささのはは みやまもさやに さわげども われはいもおもふ わかれきぬれば
当時の発音→つぁつぁのふぁふぁ みやまもつぁやに つぁやげども うぁれふぁいもおもふぅ うゎかれきぬれば
(6)ラジオ型言語とテレビ型言語 全世界の約6000の言語のうち、テレビ型言語は日本語だけ。
○ラジオ型言語とは、音声だけで伝達可能で文字はなくてもよい→音声だけが言語の全てあるという構造言語学が生まれた。文字は言語の影か写真のようなものとした。
○同音異義語の多い日本語→キョウコウ 恐惶、恐慌、強行、強硬、強行、教皇、強攻、凶行、
※ 外国語では、間違いが起こらない文脈にだけ同音異義語が使われる。
※ 日本語では、多くの場合、文字表記の映像が加わっている複合体だから可能。無意識的に映像を思い浮かべる。だから、映像が違う同音異義語が存在できる。→失語症患者の例
※ 同音字が多くなった理由→古代中国語が日本語になったとき、日本語の音韻組織が簡単なため同音化された。
コウ→公、浩、甲、抗、幸、項、功、講、高、候、鋼、効、港、工、交、考、鉱、・・・・・
(7)日本語の音韻上の弱点→子音で終われるのはNだけ。子音を頭に重ねられない。
(8)日本語の動詞は抽象的だから、何が、どのようにという主語や手段などが必要。
※ ナル→振動して音を出す。太鼓、笛など楽器、風、雨、海、山、雷など自然、腹、おなら・・・
※ ナク→人間、虫、鳥、犬など。英語では動物によりナクが違う。
ただ人が声を出すことは、喋る、囁く、語る、話す、呟く、歌う、叫ぶ、怒鳴る、わめくなど具体的。
(9)日本語の形容詞も抽象的
※ カタイは外力を加えても形が変わりにくいこと→ガラス、鉄など。ご飯、豆、肉など。決心、頭、守りなど。しかし、漢字を使うことで補うことができる。
※ 英語では個別具体的→firm, hard, concrete, stiff, sordid, tight, thick, tough,
(10)平仮名表記とかローマ字表記にしたら大変なことになる。
(11)身内の呼び方の決まり
①自分より上の人には、親族用語のお父さん、お母さん、おじいさん、お姉さんなどと呼びかけられるが、下のものに息子、娘、弟、甥などとは呼びかけられない。また、目上の親族には名前で呼べない。さらに、あなた、君などの人称代名詞も使えない。従って、目上の親族に使えるのは、お父さん、お母さんなどの親族用語だけ。
②相手に対して自分を表す言葉→自分より年上の人に親族用語(娘、息子、兄、妹、甥)などは使えない。目上の者が下の者に対しては、親族用語が使える。(お父さん、おばさん、お兄ちゃん、・・・)
③人称代名詞は家族内では上下に関係なく使える。
(12)家庭内での自称詞、他称詞の使い方は、基本原理は目上目下という日本人の伝統的な人間関係を支配する上下意識である。これは家族外の社会的な場面にも当てはまる。
目上には役職名が一般的。一般社会面ではどう呼んだらよいか戸惑うことも多い。
日本語は上下親疎に関係のない自由な言葉のやり取りが十分に発達していないといえる。
(13)ヨーロッパの言語などは自他を明確にするために人称代名詞が必須。
(14)人称代名詞は言葉の発信者と受信者が誰かを話し手が明確にするための言語手段。だから必ずしも必要ではない。
(15)日本語には、人称代名詞はない。日本語では自称詞、他称詞というべき。
(16)欧米の言語では、テニス型の対話。日本語は、スカッシュ型の対話。話し手の言葉は1度壁にぶつけられそれが相手に流れて行くようなもの。相手は3人称になっている。(※他者の目を意識H.スズキ)直接対決を避けようとする。日本人が議論に弱いことはそこから来ている。もう一つは、先に見てきたように自称詞と他称詞の使い方が上下関係になっていることも関係している
(17)文化の違いと言語
① 虹は何色?アメリカ6色、ドイツ5色、7色は先進国では日本とフランスだけ。
② 太陽の色は何色?アメリカ、ドイツ、フランス→黄色、月は城。
③ りんごは何色?フランスでは緑 他の国ではいろいろ。
④ オレンジ色は?アメリカでは茶色に近い、
⑤ 色彩を手がかりにある物を他の物と区別するとき必ずしもその色とは限らない→黒靴と赤、赤土と黒土、赤がねと黒がね、赤ワインと白ワイン、黒砂糖と赤砂糖と白砂糖、赤犬、赤潮、
⑥ 日本語の基本的な色彩語は赤、黒、青、白、黄、紫などでさまざまな色を内包していた。だから未分化というのは間違い。むしろみどりの黒髪、嬰児のようにういういしいとか生まれたばかりというような状態を表すこともある。※色彩表現語は400以上ある。
(18)日本語を読み、書き、話せる外国人を増やすことが急務。英語などの外国語を学び、文化を取り入れる時代は終わった。経済的地位、優れた技術、独特の文化を持つ大国として日本をよく知り、理解してもらうためにも日本語を広めよう。(※日本語ボランティアの役割は重要。H.スズキ)
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