マジックをする全盲ろう夫婦の生き方
10月8日、NHK教育テレビで放送された「きらっと いつも手と手をつないで」という番組を見た。全盲ろうの山口隆雄さん(55歳)と幸子さん(62歳)の日常生活を追ったものである。
二人は、生まれた時から耳がきこえなかったが、その上、夫の隆雄さんは15年前、妻の幸子さんは20年前に視力を失った。
二人が出会ったのは、盲ろう者の全国大会であった。その時、まだ少し視力が残っていた隆雄さんが幸子さんに一目ぼれをしたのだという。幸子さんは、きれいな人で外見も全盲ろうにはとてもみえない。それにおしゃれである。誰かが上手に服を選んでおられますねと言っていたが、その通りである。
全盲ろうの二人が結婚することには周囲の反対があったそうだが、それは当然である。でも、二人はそれを乗り越えて結婚し、大阪市東淀川区の公営住宅に居を構えた。
二人の生活は障害者給付に頼っている。二人だけのときは家の前ぐらいしか歩けないので外出には介助者がつくが、日常の身の回りのことは二人で助け合ってやっている。
奥さんの幸子さんが食事を作り、夫の隆雄さんが洗濯などを担当している。幸子さんが食事を作っているところが写されたが、台所は普通の家庭と同じである。幸子さんは巧みに包丁を捌いて料理を作る。スパゲティを作るのに1時間半もかかっていたが食事サービスに頼らないのは自分たちの味が大事だからだそうだ。
驚いたのは、食卓のカバーがタイガースのグッズであることだ。隆雄さんが大のタイガースファンでタイガースグッズをいろいろ持っている。また、壁には写真や絵の額も掛けてあり、健常者と同じ生活をしていることがわかる。
二人が食事をするときには、ルールがあって、話しかけたい方が食卓を叩くとその振動を感じ取ってお互いに手を出すのだ。二人の会話は「触手話」という方法である。ヘレンケラーと同じだ。手と手を触れあって会話をする。介助者とも手と手を触れ合って会話をする。
隆雄さんはタイガースの試合のことが気になって仕方がないそうだが、そんな時、幸子さんがパソコンを使ってインターネットに接続し、結果を調べて教えてあげるのだ。文章を選択するとそれを点字にしてくれる器械があるのだ。そんな器械があることを初めて知った。
驚いたのは、二人の趣味がマジックであることだ。隆雄さんはまだ目が見える時にマジックをやっていたそうだ。それで、全盲ろうや盲ろうなどの障害者でも楽しんでもらえるマジックはないかと思ったのだという。
二人は、いつも出かける全盲ろう者の集まる場所「手と手を」でマジックを披露した。幸子さんは、夫に教えてもらったウオンドからフラワーが出現するマジックを演じた。隆雄さんは、マジックショップで買ったコインの消失を演じた。どちらも相手の人に手で触れてもらって感じてもらうのだ。マジックは大成功であった。
全盲ろうでマジックをやるのは全国で二人だけだと隆雄さんが言っていた。二人はこれからもマジックをやるそうだ。
全盲ろうというヘレンケラーと同じ高度の障害を持っている人が手と手を取り合って生きている姿に感動したが、何よりも二人の生き方がごく自然体であることが素晴らしいと思った。
全盲ろうの夫婦は全国で2組だけだという。手と手を触れ合ってこれからも仲睦まじく生きて行って欲しい。
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障害があっても元気に前向きに生活したり、活動をしておられる人がいますね。貴女のお友達もその一人ですね。津軽三味線は難しいと思いますがボランティアをやれるほどの腕になられたのは凄いです。よいお友達を持っておられますね。
投稿: らら | 2010年10月11日 (月) 13時27分
先日生後8ヵ月でポリオという小児麻痺で片足をやられてしまった友人の家に遊びに行きましたが彼女はその障害に負けないで私の兄の会社に入ってくれましたが、根性の人で1年に10回ほど自分が昔身につけられた洋裁の技術を活かして中国の田舎の方に出張して中国の人達に技術指導をして14年間勤務して退職されました。その家に遊びに行き私はロープを見せて遊んでいる時に彼女もやってみたいと言うので、教えてあげたら2回程で習得されました。彼女は今津軽三味線に夢中になって仲間を5人ほど近所の生涯センターで集まってボランテァに出かけて見えます。いい友人を持つと生涯の宝ですね。
投稿: 長谷部文子 | 2010年10月11日 (月) 10時07分