私とマジック―③見せる相手は生徒
マジックを覚えると、誰でも誰かに見せたくなるものだし、もともとは見せるために覚えるのだ。
最初の観客は当然家族ということになる。中でも妻である。練習をしてある程度手順を覚えると先ず妻に見せた。家族という観客は冷静にというか、結構シビアな眼で見るから批評も手厳しい。
私がマジックを習う目的は、クラスの生徒に見せるためであった。最初に覚えたのはロープで結び目を作ったり、消したりするのや輪をはずしたり、はめたりするのであった。そんな簡単なものでも得意になって見せたものだ。
だんだんとレパートリーが増えてきて、道具物もできるようになると毎学期末のお楽しみ会で幾つかのマジックを見せた。最初の会のときには、必ず、観客としての心得をを話した。
演技中には「知っている」とか「見たことがある」などと言わないこと。
タネを知っていても人には言わないこと。
道具などを覗きに来たり触ったりしないこと。
などであった。
清水先生の旧宅で、娘さん(といっても80歳を越しておられる)が主宰して、現在、月に1回のマジック研究会をしているが、その中に私のかつての教え子の母親が偶然に参加している。しかし、その子は私の手品を知らないそうなので、おそらくその後にマジックを習い始めたのだろうと思う。 不思議なもので、教師が手品を見せると、生徒の中から興味を持つ者が出てきて、こちらが教えないのに、自分で覚えてきてやる者が出てくることであった。これは何時のときでもそうであった。
生徒がやるときには、サーストンの三原則を全員に教えた。
「マジックの世界、特に日本のマジック界で古くから知られている言葉にがあります。
ハワード・サーストン(Howard Thurston ,1869-1936)という、今世紀前半に活躍したアメリカを代表するマジシャンがいました。その偉大なマジシャンの名前を冠した言葉なのですが、実際にはサーストン自身がこのようにまとめたのではありません。しかしこの「3原則」はマジックを演じる者であれば、誰でも知っておいて損のない言葉です。
原則1.「マジックを演じる前に、現象を説明してはならない」
原則2.「同じマジックを2度繰り返して見せてはならない」
原則3.「種明かしをしてはならない」
どうです?シンプルでしょう。でも、これはどれも大変重要なことばかりです。 共通していることは、マジックの本質である「意外性」をなくすようなことは極力さけよ、ということの具体的かつ実践的なアドバイスです。 ←「魔法都市の住人」から引用
マジックを見る心得や演じる心得を教えることは大切で、マジックだけでなく、他の事柄にも役に立つことである。
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