騙された気分―「1冊10分」で読める速読術―①―
先日、栄のあおい書店に立ち寄ったら”「1冊10分」で読める速読術”という本が山積みされていた。手にとってみてみると、「その大きな成果は、『ためしてガッテン』や新聞、テレビ、雑誌などで取り上げられ、大反響を呼んでいる」と書いてあった。
「あ、そうか。この間ためしてガッテンでやっていた、『今より3倍速く読む方法』というのはこのやり方に基づいているのだな。」と思った。あの番組はビデオにも録って見たが今ひとつ分からないところがあったので買うことにした。著者は佐々木豊文で、三笠文庫への書き下ろしだという。
家に帰って早速読んだ。この速読法はもともとは1976年ごろ韓国の朴ファーヨップという人によって考え出されたものだという。著者の佐々木氏は直接発案者の指導を受けて、日本に持ち帰り、「速読脳開発プログラム」というメソッドを作ったのだという。
速読脳を獲得することで単に知的能力を向上させるだけに留まらず、その人を「変貌させる」のだというのだ。(前書き)
そして、速読によってたくさんの本を読むことがどんなに素晴らしいことであるかとうことをいろいろな角度から詳しく述べている。
速読で、「情報力」、「判断力」「先見力」「人間力」という4つの能力が養われるという。(P.17)読書によって単に知識を獲得するだけでなく、考え方、判断力、感性などその人を大きく変えるということには異論はない。
本を1冊10分で読めるようになるためには3つのステップがあるという(P.75)
第1ステップ 1分間に2000字読めるようにする。
第2ステップ 情報読みをマスターする。
第3ステップ 「速読眼」「速読脳」を開発する。
試してガッテンで紹介されたのは、第1ステップの「1分間に2000字を読めるようにするという部分であったのだ。
日本人の平均的読書スピードは1分間に500字~700字だそうだから、2000字というと約3倍になるということで、それだけでも素晴らしいし、それは誰にでも可能であるという。
我々は誰でも耳で聴くときには、そのぐらいの速さで読んだり話したりするのを聴いているというのだ。ただ、1分間に2000字を眼で追うことになれて居ないからできないだけだという。
この点には私も納得する。
では、なぜ私が「騙された感じ」を受けたのかというと、最後の「速読脳」をつける方法については書いていないからだ。
インターネット通信販売では、「この方法で世界金融恐慌の中でも確実に儲けられる」とか「韓国語をたった3ヶ月で完全にマスターできる」などというCDがうられている。
その手口は、関心をもって近づいた人を巧みに最後まで読ませるように作られており、途中の段階ではちょっとしたノウハウもちらつかせて読み手を誘導する。そして最後の方で、「この素晴らしい方法を知りたい方は50万円ですが今なら期間限定で15万円です。すぐにお申し込み下さい。」というようなkとを書いてある。要するに会員になってCDを買わせるように仕組んであるのだ。
この手のやり方は書店で販売されている本の中にも幾らでも見かける。買ってきて最後まで読んだが結局肝心なことは書いていなかったということだ。
この本もまさにそのやり方である。タイトルにある「1冊10分」で読む」ためにはこの本の著者が主催する講習会に参加をしなければ無理なのだ。いわば宣伝のための本である。まるまる宣伝では本を買った人が納得しないから第一段階は教えようということなのだ。
NHKもなめられたものである。体よく宣伝のお先棒を担がされたという訳である。640円ぐらいだから我慢すっか。
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同感です、p77の5行目に、アナウンサーや舞台俳優などのプロの話し出であれば毎分2000字近くの速度で朗読する事が出来るとありますが、これは毎秒30字で、これを発音することは無理です。
この箇所を読んだ瞬間矛盾を感じ、調べたところ。あなた様の記事を、見つける事ができ、似たような感想を持った人がいて安心しております。
投稿: はるか | 2016年9月 6日 (火) 12時21分