2024年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 顔の表情筋を鍛えて明るい表情にする | トップページ | 日本一の杜氏・農口尚彦作の酒を飲んだ »

2010年3月26日 (金)

「貧困大国アメリカ」(岩波新書)が教えてくれるもの

 友人が「貧困大国アメリカ」(堤未果著、岩波新書)を読んで凄い本だと言ったので私も読んでみたいと思った。図書館に行ったら最初の方があったので借りて来て読んだ。

 第1章 貧困が生み出す肥満国民

 第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民

 第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々

 第4章 出口をふさがれた若者たち

 第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」

 このどれをとってみても、2001年9月11日のWTSビルテロ以後、ブッシュの8年間でアメリカ国民が陥れさせられた状態を詳細に描き出している。発表されたデータを丹念に集め、一方でインタビューによる取材で現実を生々しく伝えている。

 この本に書かれていることは、単にアメリカの問題ではなく、日本でこの10年間に起きたことと重なるのだ。

 レーガン以来の「新自由主義経済」政索により「小さな政府」のスローガンの下に、規制が撤廃され、「国民の暮らしに関わる中枢機能の民営化が進められ、競争に負け転がり落ちて行った者たちを救う社会保障費が削減され」、その結果貧困層が拡大して行った。その貧困層に落とされた人たちを待っていたものは、

 第1章に書いてあるように、ジャンクフードに頼るしかない人びとの肥満化であり、第3章にあるように病院にかかれない惨めなじょうたいである。教育の分野でも、「落ちこぼれゼロ法」という聞こえのよい法律が実は嫌でも軍隊に行かざるを得ない状況を作り出すものであったことを暴いている。イラク戦争に行った兵士はそうする生きるすべがない人たちが多くを占めているのだという。

 第5章では、世界中から貧困の若者が集められて、劣悪な条件の下でイラク戦争を後方支援する民間会社や実際に戦争をさせられる民間の傭兵になっていることを書いている。その人たちはイラクで死んでも戦死者にはカウントされないのだという。闇から闇にまるで資材として葬られていくのだ。

 そこに浮かび上がって来るのは、国家ぐるみの「貧困ビジネス」である。新自由主義と「自己責任」で貧困層に落とされた人たちを民間の機関を使って軍隊に集めたり、民間の派遣会社に雇われるように仕組んで、戦争に駆り出しているのだ。これほど恐ろしい話は無い。日本の貧困ビジネスも酷いが、アメリカの貧困ビジネスは最悪である。

 私は、以前にも書いたように、ウオール街の貪欲な利益第一主義によってサブプライムローンが作り出され、リーマンショックでそれが破綻して、世界中を恐怖に陥れた罪は大きいと思っている。自由の名の下に飽くなき利益追求が、巨万の富を稼ぐ者とそれ以外の虐げられた貧困層を生み出すアメリカという国は、恐ろしい。

 そしてアメリカの新自由主義を信奉する小泉元首相と竹中元経済担当相によってそっくり日本に導入された。その結果が、高度成長期の終わり頃には「一億層中流」を謳歌したのに、「規制緩和」「民営化」「自己責任」などのキーワードの中で「過労死」「リストラ」の犠牲となり、「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」「派遣社員」「医療崩壊」「教育格差」「ホームレス」などに象徴される憐れな状況を生み出したのだ。

 利益追求第一主義は、優勝劣敗の上に立っており、ごく一部の勝者と大多数の敗者を作り出すのだ。アメリカの10年と日本の10年はそのことを証明した。だから我々は政権交代を実現させたのではなかったか。

 そうであるならば、民主党政権が目指すべき方向は明確である。それなのに何をもたもたしているのかと言いたい。

 ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

« 顔の表情筋を鍛えて明るい表情にする | トップページ | 日本一の杜氏・農口尚彦作の酒を飲んだ »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

竹中平蔵氏の唱える「規制緩和」「構造改革」「法人税減税」が今の日本の疲弊をもたらし、アメリカでも多くの貧困層を作り出したことが、この本を読むとよく分かりました。竹中・小泉はブッシュと共に過去に消え去れです。

「零細企業の疲弊を救う」というタイトルで竹中平蔵氏がとかく問題のある近畿産業信用組合会長の青木定雄氏との対談が全面広告で出ていました。
相変わらず「規制緩和が地域経済を活性化する」と言って、日本の規制緩和はそれほど進んでいない。1.法人税減税 2.規制緩和 この二つが無くては成長戦略はあり得ないといっていました。民主党のもたつきを見て、巻き返しに行こうとしているのでしょうか? 

おっしゃるとおり、日本国憲法の条文を誠実に実行すれば今よりずっとよくなるはずですよね。それを解釈憲法だとか理念だとかで歪めたりないがしろにしてきたから、酷い日本になったのですね。

 日本から「貧困大国アメリカ」を送って下さった方があり、私も読みました。国家による「貧困ビジネス」、ほんとにひどいものです。
 若い頃に「アメリカがくしゃみをすれぱ、日本が風邪をひく」といわれ、「アメリカの動かない空母」「アメリカ国、日本州」「忠犬ポチ」などと揶揄されるアメリカ追従の自民党政治に、一貫して従わない勢力が日本の中にはあります。
 自民党に代って政権をにないうる二大政党の片方としての民主党は、本質的にはアメリカ追従の政党です。国会中継を見ていると、そのことがよく分ります。
 日本には9条をはじめ、すぐれた条文をもつ憲法があり、その条文を、条文どおりの実行を迫る勢力のある限り、日本の将来には希望があります。
 50年、100年後には、貧富の格差の少ない国になりうると信じています。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「貧困大国アメリカ」(岩波新書)が教えてくれるもの:

« 顔の表情筋を鍛えて明るい表情にする | トップページ | 日本一の杜氏・農口尚彦作の酒を飲んだ »