2024年3月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 「葬式は、要らない」を読んで、―⑦―直葬がいい | トップページ | 初めて食べた”ひつまぶし” »

2010年2月27日 (土)

映画「おとうと」を観て

 山田洋次監督、吉永小百合主演の映画「おとうと」を観てきた。実は、同じ吉永小百合主演の「母べえ」と勘違いをしていた部分があった。どんな映画かも知らずに、だだ、吉永小百合と笑福亭鶴瓶が出る山田洋次監督の映画という知識だけで観に行ったのだ。

 私が、大学を出る頃に生まれた姉吟子と3人兄弟の末っ子鉄郎を巡る物語であった。蒼井優演じる一人娘の小春が、名付け親の鉄郎叔父が余りにも自堕落な生き方をしているので、大嫌いになったというナレージョンから始まった。

 小春はエリート医師と結婚することになり、ホテルオークラで行われた式に音信不通であった鉄郎が突然現れ、酒を飲んで酔っ払ったあげく、式を台無しにしてしまうというところが続く。物語はいったいどう展開しどう決着をするのかと思いながら観た。

 姉は薬剤師で、早くに優秀で優しい夫をなくし、薬局を経営しながら、女手一つで娘を育て姑の世話をしてきた。長兄もひとかどのサラリーマンのようだが、何故か弟だけが売れない大衆演劇の座長となり、放浪生活をして、酒や賭博に溺れているのだ。

 娘の小春は、結婚しても夫とうまくいかず、結局離婚してしまう。

 弟が女に130万円の借金をする。女がその金を何とかしてくれと言ってきたとき、姉は決断をして、なけなしの貯金をおろして女に渡す。普通ではとてもできないことだ。

 弟はそれまでの荒れた生活からか行き倒れとなり、警察に保護され、入院をした後、運よく大阪天王寺、釜ケ崎の通天閣が見える「みどりの家」というNPOが経営するホスピスに収容される。咽頭、肝臓などにガンがあって余命いくばくもない状態であった。

 このホスピスの経営者夫婦が素晴らしい人物として描かれている。入居者の面倒を優しく献身的にみるのだ。山田監督は、おそらく生活保護の人びとを食い物にする貧乏ビジネスの横行を下敷きに、その対極としてのNPOを描いたのではないかと思われる。

 離婚した娘の小春は、今度は誠実な大工の若者との愛を育てて行く。山田監督は、エリートとの玉の輿の結婚より、心栄えのよい普通の若者との結婚の方が幸せだと言っているようだ。

 お釈迦様の生まれた4月7日に死にたいという鉄郎は希望通りに死を迎えることになる。まるで西行法師のようだ。その前日に姉は駆けつけ鉄郎の最後の看護をする。弟は姉に有難うの言葉を伝える。臨終間際に娘の小春も間に合う。

 鉄郎がホスピスに入ってから、亡くなるまでがよい。姉とホスピスの経営者夫婦らに見守られて息を引き取る。そこに流れる温かい情感が素晴らしい。私は、「葬式は、要らない」を読んで、考えたことを書いてきたが、まさにその答えがこの映画にあると思った。

 身近の人に看取られ、静かに人生の終わりを迎える。映画には描かれていないが、おそらく直葬であったのだろう。それを示唆するのが、姉の家の箪笥の上に夫(義兄)の写真と一緒に飾られた弟の写真である。そこには仏壇がなく、もちろん位牌も置かれていない。それでいいのだ。大事なのは心のつながりである。

 この映画の宣伝コピーは「家族という厄介な、でも切っても切れない絆を描いた」である。

 吉永小百合が演じるこの姉吟子は立ち居振る舞いがよく、すこぶる優しい。吉永は見事にその役を演じきっている。

 笑福亭鶴瓶は鉄郎役を好演している。ガンで死ぬにしてはちょっと太っているのが気になったが、ハチャメチャだが人は悪くなさそうな人物にはまっている。

 原作は幸田文の「おとうと」で、1960年に市川崑監督で映画化されているという。私は、「おとうと」を読んだし、映画も観たはずだがすっかり忘れていた。この映画を観て何度も涙が溢れた。館内でもみんな泣いていた。よい映画だ。

Photo

« 「葬式は、要らない」を読んで、―⑦―直葬がいい | トップページ | 初めて食べた”ひつまぶし” »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

山田監督の映画には、一貫して貫かれているものがありますね。おっしゃるように厄介者とかはずれ者と見られる人にも温かい目でみているというのもその一つだと思います。鉄郎は寅さんにも通じるところが感じられます。

私もこの映画をみました。
ららさんが書いてみえるように、この映画には山田監督のいろいろな思いがこめられていて、山田作品の集大成のような映画だと思いました。
山田洋次氏は、常に世の中からつまはじきされる「やっかい者」に暖かい目を注いでいる。
しかし能率優先の現代社会では、そのような人は冷たい目で見られてしまう。小春の結婚相手の医者の冷たい目がその典型として描かれている。
最後の場面、散々家族に迷惑をかけた鉄郎のことを、呼ぼうという義母の言葉に心を打たれた。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 映画「おとうと」を観て:

« 「葬式は、要らない」を読んで、―⑦―直葬がいい | トップページ | 初めて食べた”ひつまぶし” »