おもしろい「欧米人の見た開国期日本」
たまたま図書館で「欧米人の見た開国期日本」(石川栄吉著、風響社刊)という本を見つけ、表題に惹かれて借りて来て読んだ。最初、かなり以前に出版された本だろうと思って読んでいたが、奥付を見ると2008年3月30日の発行となっている。しかも、著者は2005年に亡くなっておられるのだ。死後3年ほど経ってから出版されたようだ。
著者は1925年生まれで、京大文学部卒業の文学博士で、東京都立大学名誉教授であった。
著者は、江戸時代に来日した欧米人が書き残した記録を丹念に調べて、関連した項目ごとに詳しくまとめて書いている。
第一章は日本人の容姿、 第二章は花の命は短くて、 第三章は破廉恥な日本人、 といった具合で九章まである。
ある事柄について人によって異なった見方があるのは当然のことである。そうした異なった見方を対照的に取り上げているので興味深い。
非常に印象に残ったことは、役人や政治家が如何に怠け者でお役所式であったかということや、貿易商人などの中には外側によい商品入れ、中には悪い商品とか時にはゴミなどを入れて誤魔化した悪徳商人がいたこと、それに対して農民や一般市民は勤勉で清潔好きで人懐こく親切であったと捉えていることである。
政治家や役人というのはいつの時代でも姑息でいい加減で欲得が深い。それに対して庶民は概して正直で親切で勤勉なのだ。
日本人は世界一清潔好きとして捉えられていたようである。江戸などの都市には公衆の浴場があり熱い湯での入浴が好まれた。ただ、男女混浴には外国人を驚かせた。風呂に入るにも拘わらず、眼病や皮膚病が多かったそうで、それは風呂の水があまり換えられなかったからのようだ。私の子供の頃でも、銭湯の湯は少なくて真っ白に濁っていて、時には便が浮いていることもあったぐらいだ。
しかし、清潔好きの日本人だから、住居の片隅には外を掃く箒などが置いてあり、みんなで近所を掃除したり、水を打ったりした。また、燃えるゴミは拾って焚かれたのでゴミもなかったようである。ただ大便小便を集める車が臭くてたまらないと書いているそうだ。
日本人は、自分の家の前だけでなく隣などの前も掃除をした。公共の場をもきれいにするのは当たり前であった。しかし、中国は違うようだ。かつて中国に行ったとき、マンションの部屋の中は凄くきれいにしているのに階段や共同の場所は非常に汚れているのをいつも目にした。
また日本人は自然を愛することや狭いところにもちょっとした庭を造ったり、植物を置いたり、盆栽を作ったりとそういう感覚を持っていることにも注目している。
異国の人が日本に来て日本人や日本の生活や文化などをどのように見たのかを知ることはとても興味深いことである。よくまとめられた本だと思った。
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