マジック・奇術・手品・手妻・妖術などなど
図書館で興味を惹く本を見つけた。泡坂妻夫という作家が書いた「大江戸奇術考」(平凡社新書)である。泡坂妻夫氏は、直木賞受賞の推理小説などを書く作家であり、奇術家でもあった。私も「トリック交響曲」や「しあわせの書」という奇術をからめた小説を買ったことがある。
「大江戸奇術考」のP。12に、マジックや奇術などの言葉について触れている。
英語のマジックというのは、今では大変知れ渡った言葉であるが、この本によると、マジックの本来の意味は、「魔法」のことだという。辞典には、
① 魔法、魔術 ②魔力 魅力 ③奇術
「奇術」という意味は、3番目なのだ。超常的な魔法も、合理的な奇術も一緒にされている。ブラックマジックもホワイトマジックも同じマジックで言い表されている。
日本語の「奇術」という言葉も古いが、明治以後にホワイトマジックの意味で、広く使われるようになったという。奇術には魔法の響きはない。
江戸時代には、手妻、手品ということが多かったが、これは英語でいうとトリックに当たるという。
では、マジックに相当する日本語は何かというと、「怪術」「仙術」「秘事」などで、いずれも江戸時代の奇術伝授本の中に出てくるという。
ブラックマジックに当たる言葉では、「鬼道」「外術」がある。いずれも仏教から出た言葉で「鬼道」は「幻術」「妖術」の類、「外術」は仏教の法に外れた魔法をいう。
以上が引用部分である。
奇術伝授本の中に、呪いや占いなどの術が少なからず含まれていたということは、奇術とそうしたものが同じように捉えられていた部分があるからに違いない。
また、「鬼道」「外道」のように、仏教と関係していた術があるということは、重要である。何故かというと、仏教が祈祷などと絡めて、秘術として、本来の仏教の教えから外れたところ人々を惑わしていたことを示すからだ。しかも、仏教外で行われたものを「外術」として区別していたというのだ。
マジックの歴史は古く、エジプトの壁画にも出てくるという。古代には、おそらく怪しげな不思議な術を使って人々を恐れさせたり、威服させたりする人がいたのだろう。泡坂氏は、そういう人たちは、自然現象などの偶然に頼って不思議な現象を見せていたと言っている。
私は、言葉としては、「手品」という言葉が好きである。それは、自分が手練手管のマジックやショー的なマジックができないこともあるが、何よりちょっとした身近なことで人を「オヤッ?」と思わせる程度のマジックでいいと思うからである。それには「手品」という言葉がふさわしい。もっとも、「手品師」という言い方もあるが、私は「師」ではないので単に「手品」でいいのである。
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