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2009年8月 4日 (火)

朗読劇「月光の夏」を観て

 名古屋演劇鑑賞会に関係している知人の勧めで、朗読劇「月光の夏」を観た。8月1日の土曜日のマチネーとして、アートピアホールで上演された。

 開場時刻をやや過ぎた頃に行ったが、既に7割ぐらいの観客が入っていた。すぐに満席となったようだ。ただ観客に若い人は少なかったのが残念であった。

 この朗読劇は、原作・脚本が毛利恒之氏、演出が鈴木完一郎氏で、出演は劇団「東演」の男性能登剛、南保大樹、女性が岸並万里子、江上梨乃で、ピアノが根岸弥生であった。

 朗読劇は、実話をもとにしたものだそうで、構成と演出が素晴らしかった。

 演出者の説明も借りながらストーリーを書く。

  ピアノ1台と4人の朗読者によるピアノクインテット「月光の夏」ふたり

 第一楽章は「Largo} 昭和20年の初夏、2人の特攻隊員が突然鳥栖小学校に現れる。彼らはその学校にグランドピアノがあることを聞いてはるばると歩いてきたのであった。一人は音楽学校の学生から徴用された隊員でもう一人は熊本師範学校の学生から徴用された隊員であった。音楽教師の吉岡秀子が応対をした。

 音楽学校学生であった隊員は「明日出撃するので最後に是非ピアノを弾かせて欲しいと頼んだ。吉岡は楽譜は「べトーベンの月光しかない。」と言うと、それでいいからと弾き始めた。その音色は吉岡の心に染みた。隊員は「貴女の心にとどめておいて欲しい。」と言った。

 もう一人は、教頭の命を受けた小学生の歌にあわせて「海ゆかば」を弾いた。

 第二楽章は、ラジオ番組の作家三池の特攻隊員探し。

 二ヵ月後に戦争は終わった。それから45年たち、ピアノは廃棄されることになった。しかし、吉岡秀子はそのピアノを残したいと思い走り回る。そして秀子が語るその重いでは新聞やラジオで報道され、平和の記念碑としてピアノの保存が決まる。地元のラジオ局の石田りえはドキュメンタリ作家の三池安文と共にピアノを弾いたと思われる風間森介元少尉を訪ねる。しかし彼は一切を話そうとしない。

 第三楽章、テンポはAndante。特攻出撃を途中で放棄した隊員を幽閉していた「振武寮」の存在を知り、吉岡秀子と三池は鹿児島県知覧へ行く。そこには特攻平和記念館がある。そこで「月光」を弾いた海野光彦少尉の遺影を発見する。

 第四楽章、Agitato。三池の真摯な説得に遂に風間は自分が特攻隊の生き残りであること、その為に大変な思いをしたことなどを話し、鳥栖小学校でピアノを弾いたのは海野であることを話した。

 風間の母は、彼の遺髪と称するものが届けられたので入水自殺をしていた。戦争はどこまでも酷い。彼は鳥栖小学校を訪れてピアノを弾きたいと言う。

 吉岡秀子は小学校で待っていた。そこに風間が妻を伴って現れる。そして、妻が海野の妹であることを告げるのであった。

 風間が「月光」を弾き始める。

 この劇の中でピアノ演奏が3回ある。海野が弾く場面。風間が認める場面、そして最後の場面である。

 黒い服を着た出演者と黒くて暗い舞台で僅かに光が出演者を浮かび上がらせる。作者の毛利氏は、次のように書いている。

 ”単なる朗読とは違います。ベートーベンのソナタ「月光」のピアノ演奏と<ドラマリーディング>が織り成す、新機軸のライブ・ステージです。

 かつて、ラジオドラマは「心の劇場」と言われました。朗読劇もまた、観客の想像の世界をひろげます。のみならず、人間の息吹が伝わる、臨場感のある生の舞台です。名曲の調べと相まって胸で聴く、心の目で見る、感動のドラマをお届けします。戦争犠牲者の鎮魂と平和への祈りを込めて。”

 知覧基地から飛び立った若き特攻隊員でなくなった人は1036人にもなるという。中には15歳の少年も含まれていた。生きながらえた人と亡くなった人の運命の差は余りにも過酷である。

 先日NHKTVでガタルカナルの戦いを放映したが、それも同じである。生還した者と命を落としたものの差。これこそ戦争の悲劇である。戦争さえなければ、普通の生活をしてそれぞれの生を全う出来た筈なのに、「死は鴻毛より軽し」と平然と言う軍の命令によって天皇のために命を捧げさせられたのだ。

 過去の戦争によって相手国も含めて無数の犠牲者を出した。その事実を忘れないためにも語りつがれなければならない。その意味でもこの朗読劇は素晴らしいものであった。ベートーベンの月光がこのような実話に絡んでいるのをベートーベンが知ったら感無量の思いを抱くに違いないと思う。

  知覧特攻平和記念館

 知覧特攻平和会館

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