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2009年7月 4日 (土)

奇跡のりんご―絶対不可能を覆した農家木村秋則の記録を読んで

 2006年12月7日に放送されたNHKの「プロフェショナル 仕事の流儀」でりんご農家木村秋則さんが取り上げられた。それを見終わったとき、何と凄いい人がいるものかと感動した。

 「プロフェショナル」では、いろいろな分野の凄い人が取り上げられているが、中でも木村さんの印象は強く心に残った。

 その木村さんのことが「奇跡のりんご」という本になり、爆発的に売れていると聞いた。それで是非読みたいと思い図書館に予約をした。2月初め頃のことである。そのとき、50数人の予約待ちがあった。

 昨日、図書館に行くと「予約本が来ていますよ。」という。待望の「奇跡のりんご」であった。

 著者は、ルポライターの石川拓治さんで幻冬舎から出版されていた。

 家に帰ると一気に読んだ。大変読みやすく書いてあり、本の構成もよくできているし、記述も大変優れている。さすがはルポライターだと感心しながら読んだ。

 この本の題名は「奇跡のりんご」で、副題が「絶対不可能を覆した農家木村秋則の記録」である。

 なぜ、””奇跡のりんご”かというと、りんご栽培は大変難しくて農薬散布や施肥や袋掛けなど大変に手間のかかるものなのに、無謀にも、”絶対不可能と思われた無農薬自然栽培”を目指して、最終的には成功したからである。

 無農薬自然栽培によって出来たりんごは、素晴らしい味だという。是非食べてみたいと思うのだが、1年以上の予約待ちで手に入れるのは大変困難なようだ。

 この本を読んで、木村さんのターニングポイントは、3回あったことがわかった。

 一度目は、農家に養子に出たことである。彼は、幼少の頃から器械のメカニズムに興味を持ち玩具のロボットを解体したり、ラジオやアンプを作ったり、コンピューターやエンジンに興味を持っていた。一度興味を持つとトコトン追求するタイプでその技術をものにしてしまう。だから養子にいかなければ優秀なエンジニアになっていたかも知れない。

 二回目のターニングポイントは、たまたま書店で一冊の本を買う羽目になったことである。買うつもりがなく弁償のつもりで仕方なく買った本が、福岡正信という篤農家の書いた「自然農法」という本であった。その本を1年近くもほっておいてある日眼を通して釘付けになったのだ。

 それまではアメリカ式のトラクターによる機械式農業でトウモロコシの生産を目指していた。もし、その本に出会わなければ、大規模なトウモロコシ農家になっていたかもしれないのだ。

 彼は、「自然農法」を擦り切れるほど読み、自らも実践をする。そしてミカンでできるならりんごでもできるだろうと無謀にもりんごの栽培に取り入れようと考えたのだ。

 それからの彼の試行錯誤は悲惨なものであった。生活は困窮を極めた。そして7年目のある日、遂に彼は自殺を図ろうと山に登るのだ。

 まさに死のうとするそのとき彼は山に生えるりんごの幻想を見る。そして気がつくとそれは自然の中で実をつけているドングリの木であった。これが第3のターニングポイントである。

 偶然が人生を左右することがあるが、養子に入ったことと書物との出会いがそれである。

 そしてもう一つ、勝間和代風に言えば「フレームワーク」(関心をもって課題を追求すること)であり、茂木健一郎風に言えば「ひらめき」である。

 彼が「自然農法」に眼を向けたのは、彼の関心がそこにあったからキャッチできたのだ。また、ドングリの木を見て「これだ!」と悟ったのはひらめきがあったからである。まさにニュートンのリンゴである。

 私がもう一つ感心したのは、彼のひたむきな研究を家族みんなが支え続けたことである。彼は養子なのに、その家を貧窮のどん底に落としたにも関わらず、義父母も妻も3人の娘もひたすら彼を支持して我慢して助けたのだ。

 ―この本から学んだことはつづきとして書く― 

 

http://www.cheziguchi.com/kimura.htm

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