リンゴ農家・木村秋則さんが見つけたこと―土の大切さ―
リンゴ農家の木村さんは、無農薬自然農法でリンゴを栽培することを目指して8年にわたりリンゴの木につく害虫をとることや堆肥を作ることなどでいろいろな方法を試している。
ところがどれもうまくいかず、800本のリンゴの木は葉を落とし、花を咲かせず、ついには枯れるものまで出てくる。
自慢のトラクターや自動車やオートバイを売り払い、大事な田畑も一部を手放してしまう。生活が困窮を極める中であくまでも追及する姿勢はすごい。
しかし、万策尽きて、遂に自殺を決意し山に登る。そしてまさに死のうとしてロープを樹にかけようと投げたとき、ロープは飛んでいってしまう。その方向に野生のドングリの木があったのだ。
神がかりとしか言いようがない不思議なドラマティックな展開である。
彼は、ドングリの木が元気に葉をつけているのを見て、「農薬を使わないのになぜ自然の植物が育つことを不思議に思わなかったのか」と思う。
そして、その理由に気がつくのだ。
それは、土だった。
ドングリの木の周りには、雑草が生え放題で土は足が沈むくらいふかふかだった。土は素手で掘ることができた。
「それと同じ土を作ればいい。」と彼は直感した。
ニュートンはリンゴが落ちるのを見て万有引力を発見した。木村さんは、ドングリの木をみて土の大切さに気づいた。どちらも一つのことを追求してきてのひらめきである。
彼はそれまで土の上のことばかりを考えてきたが、土については堆肥を肥料としてやることぐらいしか考えなかったことに気がついた。リンゴの木が根を張る土がどんなに大事であるかに気がついたのだ。
ドングリの木の土はどこまで掘っても温度が一定だったという。リンゴ園の土は10cm掘るだけで極端に低くなっていた。さまざまな生物や微生物が存在してドングリの木の土をふかふかにし豊かにしていたのだ。まさに「土は生きている」のだ。山の土が温かいのは微生物がいて活動をしているからだと気づく。
その大事な土を農薬で生物や微生物を殺してしまうことで生態系を駄目にしてしまっていたのだと知る。
木村さんは、リンゴ園の土を山の土と同じような土にしようと考えて実行する。
小学校6年生の国語の教科書に、「生きている土」という教材があって、原生林の土はさまざまな生物や微生物の生態系で成り立っており、大変豊かであること、従って土を豊かにする生物や微生物が大事であることを教えるものであった。
木村さんは、リンゴの自然栽培を目指す中でそのことに気づいたのだ。私は、「生きている土」を木村さんの実践を加えて改定するといいと思う。
※つづく
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