うつくしく、やさしく、おろかなりー私の惚れた「江戸」を読んで ①
図書館で杉浦日向子さんが書いた「うつくしく、やさしく、おろかなりーー私の惚れた『江戸』」(筑摩書房刊)という本を偶然に見つけ借りてきた。なかなか面白い(興味深い)本である。
杉浦さんは漫画家で江戸研究家としても知られていたが、惜しくも早世された。
いろいろな雑誌に書かれたことや講演を集めた本である。
その中の「江戸・遊里の粋と野暮」という題の講演が面白い。
子どもの頃、遊んでいて夕方になると「ご飯だよ」とよく呼ばれたものだ。だから食事のことを丁寧に言うと「ご飯」でそうでない言い方が「めし」だと思ってきた。
ところがこの本によると、江戸時代には、精白した米の炊き立ての状態をご飯と言ったというのだ。つまりまだ湯気がたっているものだそうだ。
「ご飯ですよ」と言うのは、江戸の地方言葉で江戸特有の言い方だったという。将軍のお膝もとの江戸では長屋の住人までが白米を常食にしていたという。
私は、健康のために数年前から玄米を主にして食べているが、江戸時代は江戸以外では玄米や雑穀を食べていたようだ。それを「めし」と呼んでいたそうだ。つまり「めし=食事」のことであったのだ。 ”松茸ごはん”、”栗ごはん”五目ごはん”などというのは、全て間違いで”松茸めし”五目めし”が正しい言い方だったという。 「ご飯」も冷めると「冷めし」になり格が下げられた。
林文子の有名な小説に「めし」というのがあるが、彼女は尾道の出身だから”めし”なのかも知れない。
私の推測では、明治以後白い米を食べられる人が増えて「ご飯」が東京から地方へと広がったのかもしれない。或いは白いご飯に憧憬があってご飯を食べられたときにそう言ったのだろうか?
現在では、パン食でも「ご飯ですよ」という。「パンですよ」とは言わない。江戸の人が聞いたらびっくりするだろう。
日常茶飯のことでも知ると驚くことがあるものだ。
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コメント
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江戸時代江戸は世界きっての大都会だったそうですが、庶民の暮らしは貧しかったようです。それを逆手にとって上手に生きていたのかも知れません。
戦前、戦後を経験している私は江戸の生き方を学べば不況も怖くは無いと思っています。
投稿: らら | 2009年3月16日 (月) 08時51分
杉浦日向子さんはコメディお江戸でござるに出てられて、私もファンでした。
昔はよかったとよく言われますが。江戸文化が爛熟した時代は美しく活気にみちていたことでしょう。それに人間が人間らしい時代だったとおもいます。
投稿: maron | 2009年3月16日 (月) 05時04分